海外にも特殊清掃業はあるのでしょうか?
今までこのサイトの記事では日本国内の特殊清掃業事情について触れてきましたが、今回は海外の特殊清掃業について説明します。
日本の特殊清掃業者は、孤独死や事故死の後処理を行っています。
遺体を放置していますと衛生上好ましくありませんから、消毒、脱臭、清掃などの後処理を行う訳です。
ですが海外の特殊清掃業者の場合、日本の特殊清掃業者よりも幅広い業務に携わっています。
例えば覚せい剤や催涙ガスなどの処理も行います。
覚せい剤の調査と除染も行う海外の特殊清掃
日本では、あまり覚せい剤は出回っていません。たまに報道で流れる事はあっても、海外ほど流通していないのです。
海外では流通している事が多々あるので、特殊清掃業者はその覚せい剤の処理も行います。この作業を英語で「Meth cleaning」といいます。
日本のように遺体の処理だけを行うのではなく、覚せい剤現場の清掃にも関わっている訳です。
海外で販売されている不動産物件の場合、「過去に覚せい剤の製造施設があった」というパターンもあります。
それを知らずに物件に住んでしまうと、様々な健康被害が出てくる事があります。例えば、呼吸器系に問題が生じたり、中毒になったり、皮膚に以上が生じたりします。
また、爆発や火災が発生する可能性もあり、危険な現場です。
元覚せい剤工場の清掃は大変難しいです。薬は清掃員にとって有害ですし、洗浄水などが不用意に屋外に流れ出てしまった場合、土壌汚染に繋がってしまいます。
海外の特殊清掃業者は、まずは建物の内外を確認して空気や土壌をサンプリングして分析し、汚染状況を把握します。
そのあとに清掃員に健康被害が生じないよう、物件の現状復帰を行っている訳です。
かなり専門技術が必要となる清掃と言えるでしょう。
催涙ガスが使われた現場をきれいにする
覚せい剤だけでなく、催涙ガスが使われた現場の清掃も行います。
この清掃を英語で「Tear Gas Remediation」といいます。
催涙ガスは通常警察によって使用され、暴動を起こした人や、犯人などに向かって噴射されます。
催涙ガスは人を死に至らせるようなものではありませんが、人にとって有害であると言われています。
例えば、呼吸器系に問題を引き起こしたり、皮膚を刺激したりします。
催涙ガスには「OCガス」「CSガス」「CNガス」などがあり、成分、作用が異なるのでどのガスを取り扱っているかを知ることは重要です。
催涙ガスは時間の経過とともに、消えて行くことはないので建物内で使われると、そのまま残留物が残ってしまいます。
ガスの粒子は重いので時間がたつと沈降しますが、加熱下で粉末からガス状態に移動する可能性があり再度空気汚染を引き起こすことも考えられます。
海外の特殊清掃業者は、こういった催涙ガスが使われた後の現場の除染作業も行うのです。
まず、使われた催涙ガスの種類と量を調べ作業方針が決まったら、催涙ガスの時間がたつと沈降する性質を利用して上の部屋から順番に下の部屋まで清掃していきます。
多孔質の家具には、ガスが染み込んでいる可能性があるので処分されることが多いです。
粒子が浮遊しないように気をつけながら残留物を除去する作業をなんども繰り返します。
完全に残留物を除去するのは難しいので、全ての清掃が終わると実際に作業員が空気を嗅いで検査を行う業者もあります。
全ての工程が終了するまでに4日〜2週間程度かかるようです。かなり大変な作業と言えるでしょう。
災害に見舞われた地域の現状復帰も行う
さらに災害が発生した後の復帰もおこないます。
海外では、一部の地域で大洪水が発生している事もあります。
洪水の間の水位の上昇は、ストレスと水害から大きな問題を引き起こします。
例えば、生の下水にはさまざまな細菌や寄生虫、さらに発がん物質や未知の化学物質が含まれている可能性があります。
建物の内部が水に浸かってしまうと、たとえ水位が下がったとしても清掃しないと健康被害が生じことがあります。
海外では特殊清掃業者が災害時の現状復帰も行っているのです。
まとめ
日本での特殊清掃業者は、主に遺体現場の清掃に特化しています。
物件の消毒、脱臭作業などは行っていますが、上述の覚せい剤や催涙ガスなどに関わる作業は行っていません。
海外では、自然災害の後処理や現状復帰なども行っています。
海外の業者は、海外のニーズに合わせて日本の業者と比べるとかなり幅広い作業を行っているという訳です。